米国株を外貨で売買していると、証券口座の外貨預り金のほかに、銀行の外貨預金や外貨建MMFでドルを持つことがあります。持っているドルを預け替えたり、別の資産の購入に使ったりしたとき、為替差益を所得として認識する必要があるかどうかは、場面によって変わります。

この記事では、国税庁の質疑応答事例をもとに、場面ごとの扱いを整理します。いずれも国税庁が「照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答」として示しているもので、個別の取引では扱いが異なることがあります。

場面ごとの扱い

場面為替差益の認識国税庁の質疑応答事例
外貨預金を満期で払い出し、同じ通貨のまま別の銀行に預け入れる認識しない外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い
外貨預金を払い出し、外貨建MMFに投資する認識する預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合
外貨預金を払い出し、外国の建物を購入する認識する預け入れていた外貨建預貯金を払い出して貸付用の建物を購入した場合
持っている米ドルを、ユーロなど別の外国通貨に交換する認識する保有する外国通貨を他の外国通貨に交換した場合

同じ通貨のまま預け替える場合

国税庁の事例では、米ドルの定期預金を満期で払い出し、同じ日に元本を別の銀行に米ドルのまま預け入れた場合について、為替差益を認識する必要はないとしています。同じ金融機関に同じ外国通貨で預け入れる場合は外貨建取引に当たらないとする所得税法施行令167条の6第2項を踏まえ、同じ外国通貨で預け入れと払い出しを続ける限り、外国通貨を持ち続けている場合と実質的に変わらない、という考え方です。事例では、別の銀行への預け替えも、この規定にいう預け入れに類するものとして扱っています。

外貨で別の資産を購入する場合

外貨預金を払い出して外貨建MMFに投資した事例では、MMFという新しい経済的価値を持つ資産が流入したことで、それまで評価の差にすぎなかった為替差損益が実現したと考えられる、として、為替差益を所得として認識する必要があるとしています。

事例の数字では、1ドル90円で預け入れた10万ドルを、1ドル105円のときに外貨建MMFに投資しています。為替差益は(105円 − 90円)× 10万ドル = 150万円 です。

外国の建物を購入した事例も、同じ考え方で為替差益を認識するとしています。これらの事例はMMFと建物についてのもので、米国株についての明記はありませんが、米国株をドルで買う場合も、持っていた外国通貨で別の資産を取得する点では同じ構造と考えられます(「米国株の為替差益に税金がかかるのはどんなとき?」)。

別の外国通貨に交換する場合

100万円を1ドル100円で1万ドルに替え、その1万ドルを1ユーロ150円のときに8,000ユーロに交換した事例では、ユーロへの交換時に為替差益を認識する必要があるとしています。為替差益は(150円 × 8,000ユーロ)−(100円 × 1万ドル)= 20万円 です。円に戻していなくても、別の外国通貨に交換した時点で認識する点に注意が必要です。

何回かに分けてドルを用意している場合

外貨を2回に分けて預け入れ、その外貨で建物を購入した事例では、所得税法施行令118条1項(有価証券の取得費の計算)に準じて、持っている外貨全体の平均レートで為替差益を計算するのが相当とされています。施行令118条1項は、「最初に取得した時(その後すでに譲渡している場合は、直前の譲渡の時)から当該譲渡の時まで」の期間で、総平均法に準ずる方法により平均すると定めています。条文の上では「総平均法に準ずる方法」とされていますが、手放すたびに前回以降の分で平均するため、計算の結果は移動平均法と同じになります。具体的な数字で確かめた計算例は、別の記事に載せています(「ドルの為替差損益の計算方法」)。

外貨建MMFそのものの損益と、利息

この記事で扱ったのは、持っていたドルの為替差益です。それとは別に、次のものにはそれぞれの課税の仕組みがあります。

  • 外貨建MMFを売却・解約したときの損益: 国税庁の質疑応答事例では、外貨建MMFは米ドル建ての公社債投資信託とされています。国税庁の説明では、公社債投資信託は「特定公社債等」に含まれ、また公募投資信託の受益権は「上場株式等」に含まれるものとして挙げられており、上場株式等の譲渡による所得は申告分離課税の対象です。MMFへの投資時の為替レートによる円換算額が、MMFの取得に要した金額になるとされています(上の MMF の事例)
  • 外貨建MMFの分配金: 国税庁の説明では、公社債投資信託の収益の分配は利子所得とされ、特定公社債等の利子等として15.315%(ほかに地方税5%)が源泉徴収されたうえで申告分離課税の対象となり、確定申告をしないことも選べます
  • 外貨預金の利息: 預貯金の利子は、原則として15.315%(ほかに地方税5%)が源泉徴収され、それで納税が完結する源泉分離課税です

なお、この記事で取り上げた国税庁の事例は、いずれも「便宜上、預金の利子は考慮していません」としており、利息として受け取った外貨の扱いには触れていません。利息や分配金として受け取ったドルを、その後に株の購入などに使った場合も、ほかのドルと同じように為替差損益の計算の対象になると考えられますが、ご自身の取引での扱いは、税理士等の専門家または所轄の税務署にご確認ください。

まとめ

  • 同じ外国通貨のまま預け替えるだけなら、為替差益は認識しないとされています
  • 外貨で別の資産(外貨建MMF・建物など)を取得したときや、別の外国通貨に交換したときは、為替差益を認識するとされています
  • 何回かに分けて用意した外貨は、持っている外貨全体の平均レートで計算する事例が示されています
  • 外貨建MMFの売却損益や外貨預金の利息は、ドルの為替差益とは別の仕組みで課税されます

出典

為替差損益の計算を自動化する

TaxelPort は、取引を記録するだけで、ドルの平均取得レートと為替差損益を移動平均法で自動計算し、 確定申告に書く3つの金額にまとめます。