外貨決済で米国株を売買していると、ドルを使うたびに為替差損益が生じます(詳しくは「米国株の為替差益に税金がかかるのはどんなとき?」)。この記事では、1年分の為替差損益を確定申告するときに、どの金額をどこに書くかを整理します。
所得の区分
ドルの為替差損益は雑所得です。株式の譲渡損益(譲渡所得・申告分離課税)とは別の区分で、給与などほかの所得と合わせて税率が決まる総合課税の対象です。
雑所得は「公的年金等」「業務」「その他」に分かれています。投資で持っているドルの為替差益は、副業などの業務によるものではないので、通常は「その他」に当たります。
申告書に書く3つの金額
雑所得(その他)は、次の3つの金額で申告します。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 収入金額 | その年に使ったドル(株の購入・円への両替など)を、使ったときのレートで円に換算した金額の合計 |
| 必要経費 | 使ったドルを取得したときの金額(取得価額)の合計 |
| 所得金額 | 収入金額 − 必要経費(=その年の為替差損益の合計) |
所得金額だけでなく、収入金額と必要経費も書く点に注意してください。必要経費(使ったドルの取得価額)は、ドルを何回かに分けて用意している場合、取得レートを平均して求めます(「取得レートの平均の取り方と国税庁の事例」)。
計算例
1年間に次のようにドルを使い、移動平均法で計算した場合の例です。
| 日付 | 取引 | 使ったドル | 円換算額(収入金額) | 取得価額(必要経費) | 為替差損益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3月10日 | 株を買う(156円) | 600ドル | 93,600円 | 90,000円 | +3,600円 |
| 8月10日 | 株を買う(146円) | 1,000ドル | 146,000円 | 142,857円 | +3,143円 |
| 11月10日 | 円に戻す(152円) | 200ドル | 30,400円 | 28,571円 | +1,829円 |
| 合計 | 1,800ドル | 270,000円 | 261,428円 | +8,572円 |
この場合、収入金額 270,000円・必要経費 261,428円・所得金額 8,572円 を申告します。
申告書のどこに書くか
確定申告書では、次の欄に書きます(欄の名前は、国税庁の確定申告の手引き(雑所得)によります。様式は年によって変わることがあるため、申告する年の手引きもあわせてご確認ください)。
- 第一表「収入金額等」の雑所得の「その他」の欄に、収入金額を書きます
- 第一表「所得金額等」の雑所得の「その他」の欄に、所得金額(収入金額 − 必要経費)を書きます
- 第二表「所得の内訳」に、所得の種類(雑)、種目(例: 為替差益)、所得の生ずる場所(例: 取引している証券会社の名前)、収入金額などを書きます
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作る場合は、雑所得(その他)の入力画面で収入金額と必要経費を入れると、所得金額が計算されます。
雑所得の金額がマイナス(為替差損)になった場合、その損失は給与など他の区分の所得と相殺できず、翌年に繰り越すこともできません。同じ雑所得の中であれば、ほかの黒字と相殺できます。
申告が必要かどうかの目安
会社員などの給与所得者で、給与を1か所から受け取っていて年末調整を受けている人は、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告は不要です(国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人)。
ただし、次の点に注意が必要です。
- 20万円は、為替差益だけでなく、ほかの副収入なども合わせた「所得」の合計です
- 医療費控除やふるさと納税などで確定申告をする場合は、20万円以下でも為替差益を含めて申告します
- 20万円以下で所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告は必要になることがあります。お住まいの市区町村にご確認ください
申告が必要かどうかは、ほかの所得や控除によって変わるため、判断に迷う場合は税理士等の専門家または所轄の税務署にご相談ください。
残しておきたい資料
為替差損益の計算は、証券会社の年間取引報告書には載りません。説明を求められたときに計算の根拠を示せるよう、次のものを残しておくと安心です。
- 証券会社の取引報告書・約定履歴(株の売買の日付・金額)
- 外貨の入出金の明細(円とドルの両替・配当・利息)
- 円とドルを両替したときのレートが分かるもの
- 為替差損益の計算の明細(取引ごと、または年ごと)
TaxelPort の「確定申告用のまとめ」では、1年分の収入金額・必要経費・所得金額と、その根拠になる取引の一覧を表示し、CSV で保存できます。計算の結果は入力した取引にもとづく参考値なので、申告の前に内容をご確認ください。
まとめ
- ドルの為替差益は、雑所得の「その他」として申告します
- 書くのは、収入金額(使ったドルの円換算額)・必要経費(そのドルの取得価額)・所得金額(差額)の3つです
- 給与所得者で為替差益などの所得が20万円以下なら所得税の申告が不要な場合がありますが、住民税は別です
為替差損益の計算を自動化する
TaxelPort は、取引を記録するだけで、ドルの平均取得レートと為替差損益を移動平均法で自動計算し、 確定申告に書く3つの金額にまとめます。