米国株を売買すると、株価の値上がり・値下がりのほかに、ドルと円の為替レートの動きも損益に影響します。ところが、為替の動きによる損益がどの所得として、いつ課税されるかは、取引のしかたによって変わります。
この記事では、証券会社で米国株を買うときの2つの決済方法(円貨決済と外貨決済)を比べながら、ドルの為替差益が生じる場面を整理します。
2つの決済方法
米国株は、多くの証券会社で次のどちらかの方法で買えます。
| 決済方法 | 代金の支払い方 | ドルを持つ期間 |
|---|---|---|
| 円貨決済 | 円で支払い、証券会社が売買と同時にドルへ替える | なし |
| 外貨決済 | 先に円をドルに両替しておき、そのドルで支払う | ある |
違いは、自分でドルを持っている期間があるかどうかです。円貨決済では、買うときも売るときも、円とドルの交換が売買と同時に行われます。外貨決済では、円をドルに両替してから株を買うまで、また株を売ってから円に戻すまで、ドルを持ち続けることになります。
株式の譲渡損益と、ドルの為替差損益は別のもの
外貨で米国株を売買したときの損益は、次の2つに分かれます。
- 株式の譲渡損益:株を買ってから売るまでの損益。買ったときと売ったときの為替レートで円に換算して計算します。特定口座であれば、証券会社が計算します(譲渡所得・申告分離課税)
- ドルの為替差損益:ドルを取得してから、そのドルを使う(株の購入に充てる・円に戻す)までのレートの差による損益(雑所得・総合課税)
株を持っている間の為替の動きは、株式の譲渡損益のほうに含まれます。一方、ドルを持っている間の為替の動きは、ドルを使った時点で、株式とは別の所得として扱われます。
国税庁の質疑応答事例では、外貨預金を払い出して外国の不動産や外貨建MMFを購入した場合に、預金として持っていた外貨の為替差益を、購入の時点で所得として認識する必要があるとされています(国税庁「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い」)。
計算例:同じ売買を2つの方法で行った場合
1ドル=145円のときにドルを用意し、150円のときに株を1,000ドル分買い、155円のときに1,100ドルで売り、最後に152円で円に戻した場合を考えます。
外貨決済の場合
| 日付 | 取引 | レート | ドルの為替差損益 |
|---|---|---|---|
| 1月10日 | 145,000円を1,000ドルに両替 | 145円 | ― |
| 3月10日 | 1,000ドルで株を買う | 150円 | (150 − 145)× 1,000 = +5,000円 |
| 9月10日 | 株を1,100ドルで売る | 155円 | ―(ドルが増えるだけ) |
| 12月10日 | 1,100ドルを円に両替 | 152円 | (152 − 155)× 1,100 = −3,300円 |
この年のドルの為替差損益は、5,000 − 3,300 = 1,700円(雑所得)です。株式の譲渡益は、売却額 1,100 × 155 = 170,500円 から 取得額 1,000 × 150 = 150,000円 を引いた 20,500円 で、こちらは証券会社の年間取引報告書に載る金額です。
ポイントは3月10日です。円に戻していなくても、ドルで株を買った時点で為替差益が生じています。
円貨決済の場合
円貨決済では、買うときに150,000円を支払い、売るときに170,500円を受け取ります。ドルを持つ期間が無いため、外貨決済のようにドルを使うたびの為替差損益は生じないと考えられます(本サービスでも、円貨決済の売買はドルの残高・為替差損益の計算に含めていません)。売買の損益(20,500円)は、株式の譲渡損益として扱われます。
実際の円貨決済では、証券会社が定める為替レート(手数料を含む)で換算されます。上の例では、比べやすいように同じレートにしています。
為替差損益が生じる取引・生じない取引
ドルの為替差損益は「ドルを使ったとき」に生じます。ドルが増える取引では生じません。
| 取引 | ドルの増減 | 為替差損益 |
|---|---|---|
| 円をドルに両替する | 増える | 生じない |
| 株の売却代金・配当・利息をドルで受け取る | 増える | 生じない |
| ドルで株を買う | 減る | 生じる |
| ドルを円に両替する | 減る | 生じる |
同じ金融機関で同じ通貨のまま預け替えるだけなら、為替差損益は認識しないとされています(国税庁「外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い」)。
よくある思い込み
「円に戻していないから関係ない」
上の例のとおり、ドルで株を買った時点で為替差損益は生じます。ドルのまま売買を繰り返している場合も、買うたびに計算の対象になります。
「特定口座だから証券会社が計算してくれている」
特定口座で証券会社が計算するのは、株式の譲渡損益です。ドルそのものの為替差損益は別の所得なので、年間取引報告書には載りません。
「NISAで買っているから非課税」
NISA で非課税になるのは、NISA 口座で買った株式の譲渡益と配当です。株を買うために使ったドルの為替差損益は、株式の譲渡益とは別のものです。本サービスでは、NISA で買い付けた株式の代金に使ったドルも、為替差損益の計算に含めています。
まとめ
- 円貨決済だけで売買していれば、ドルを持つ期間が無いため、ドルの為替差損益は生じないと考えられます
- 外貨決済では、ドルを使うたび(株を買う・円に戻す)に為替差損益が生じます。円に戻していなくても生じます
- ドルの為替差損益は、株式の譲渡損益とは別の所得(雑所得)で、証券会社の年間取引報告書には載りません
ドルを何回かに分けて用意している場合は、「どのレートで用意したドルを使ったか」を決める計算が必要になります。その方法は「為替差損益とは」で説明しています。
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